去りゆく紫金山-アトラス彗星(C/2023 A3)
Tag: K1Ⅱ 彗星 星景 紫金山アトラス彗星 C/2023 A3 青森 滋賀
2024年10月の夜空を楽しませてくれた紫金山-アトラス彗星も、月末には地球から遠ざかり、肉眼では見えなくなっています。もうしばらくはコアな天文ファンを楽しませてくれるでしょうけど、一般にはお別れです。
今年の東海地方の10月は秋雨前線の停滞で晴れる日がほとんどなく、このままでは何もできないうちに彗星はどんどん遠ざかって暗くなってしまうと思われました。私は近所で見ることに見切りを付けて、晴れる場所を探して遠征することにしました。
2024年10月21日
数値計算の予想で雲が少なそうな場所を探して、琵琶湖の東岸を選びました。
伊吹山の西にある琵琶湖畔の長浜市です。
伊吹山ドライブウェイの山頂駐車場は観測条件が良さそうなのですが、残念ながら営業時間後の夜の滞在は不可能なので使えませんでした。
ホテルの近所を下見してここに決めました。水泳場です。琵琶湖は淡水なので海水浴場とは呼びません。
日が暮れて夕闇が迫ると彗星はその姿を現しました。
2024/10/21 18:32:40
PENTAX K-1 Mark II
HD PENTAX-D FA* 50mm F1.4 SDM AW
ISO1600、F1.4、3秒。
Kenko フィルター スターリーナイト使用。
久しぶりに見た彗星は、だいぶ金星から離れて空高く見えるようになっていました。明るさは大部落ちて、肉眼でかろうじて見える程度になっていました。
拡大するとアンチテイルもうっすら見えました。
2024/10/21 18:24:47
HD PENTAX-D FA* 85mm F1.4 ED SDM AW
ISO1600、F1.4、3秒を数枚コンポジット。
スターリーナイト使用。
琵琶湖畔は予想よりも向こう岸からの光害が多くて、彗星の左にある天の川はほとんど全く見えませんでした。でも彗星は光害に負けずに長い尾を見せていました。すべてのレンズで、撮影には光害カットフィルターを使用しました。
2024/10/21 19:05:24
HD PENTAX-D FA* 50mm F1.4 SDM AW
ISO1600、F1.8、4秒。
スターリーナイト使用。
沈みゆく彗星。このときも双眼鏡ならまだ見えていました。
2024/10/21 20:11:17
HD PENTAX-D FA* 85mm F1.4 ED SDM AW
ISO1600、F1.8、5秒。
スターリーナイト使用。
ここは思ったより市街地の明かりが強くて空が明るかったので、彗星は肉眼ではほとんど見えませんでしたが、双眼鏡では写真通りの長い尾を引いた姿を見ることができました。もっと暗い空で見たいなあと思いました。
2024年10月25日
琵琶湖遠征後も東海地方は晴れる日がなく、また遠征を考えました。天気の数値計算を検討した結果、青森県に決めました。前日の計算では25日には快晴になることが予想できました。青森へは新幹線を乗り継げば一直線なので、気軽に行けるのも選んだ理由です。
最終的に観測場所は津軽半島の西海岸に決めました。
新青森駅で降りてレンタカーを借りると、まず向かったのは十三湖。ここは以前来たときにしじみを食べたところ。十三湖はしじみの産地です。
しじみの昼食を済ますと観測地探しです。
十三湖から宿のある鰺ヶ沢へ南下していきました。
ここは下調べで目を付けていた展望台。高山稲荷神社のそばにあります。入り口に立ってるオブジェ?は岡本太郎風です。
上ってみると見晴らしが良かったのですが、北側の津軽半島から東にかけてはよく見えましたが、彗星のある西側が見えないので残念ながらボツです。
場所探しで南下していっても海岸の道路がなくて、なかなか良い場所が見つかりません。私の住む東海道は海岸沿いに町があって、海沿いの道路はすぐに見つかります。しかし津軽半島は海岸は森になっていて、道路は海岸より内側を走っていました。これは冬の厳しい日本海の寒気を避けるためなのかもしれません。
いったん鰺ヶ沢のホテルにチェックインして、再び北上して観測地探しです。
森の中から海へ行けそうな道を何回か試して到達したのがここです。
岩木山から鰺ヶ沢の町まで見渡せる海水浴場の海岸です。
美しい夕日でした。
赤道儀を設置したのは海水浴場に突き出した桟橋の上です。桟橋は橋のようになっているのですが、途中が崩れたということで中ほどで通行止め。でも、そのおかげで桟橋上に車を停めても問題ないです。到着時には釣り人の車がありました。
実はこの写真でも見えている岩木山に車で登ると日本海が見渡せるのですが、伊吹山と同じで営業時間後の滞在が不可能なので、星の観測地には使えませんでした。冨士山の静岡県側が自由に夜間滞在できて、星見スポットになってるのに比べると、残念なことでした。
日没後に彗星を探します。
まだ空の青さが残る中、彗星を見つけました。
2024/10/25 17:58:11
PENTAX K-1 Mark II
SMC PENTAX-FA 31mm F1.8AL Limited
ISO1600、F2.2、15秒×11枚コンポジット。
TOAST Proで自動追尾。
数日前に琵琶湖で見たときよりも天の川に近づきました。
今回は天の川と彗星の撮影が目的だったので、じゅうぶんに暗い夜空の場所を選び、赤道儀も使って長時間露光できるように準備。彗星は21日に見た時よりさらに少し小さく、暗くなっていて、肉眼ではかすかに存在が分かる程度で、5等級程度の明るさと思われました。
2024/10/25 18:10:30
CarlZeiss Distagon T*25mm ZK F2.8
ISO1600、F3.5、20秒×15枚コンポジット。
夕焼けの残る地平線近くに金星があり、彗星はそのずっと上で天の川の横にいました。向こう岸は鰺ヶ沢の灯りが見えます。
望遠レンズで拡大。
2024/10/25 18:31:25
SMC PENTAX-FA 135mm F2.8
ISO1600、F4、25秒×17枚コンポジット。
肉眼では見えなくても、双眼鏡ではこの写真のような明るい核と長い尾が見えました。
ここには埼玉から車で来たという方もいて、彗星をねらってみたけどよく分からなかったというので、今夜の彗星の位置や撮り方などをアドバイス。
金星も沈み、だんだん低くなっていく彗星。
2024/10/25 18:58:49
SMC PENTAX-FA 31mm F1.8AL Limited
ISO1600、F2.8、25秒×19枚コンポジット。
この後は双眼鏡で眺めて、最後のお別れをしました。
次にこの彗星が地球の近くに来るのは8万年後とか。
宇宙の時間の中ではこの出会いは奇跡のような一瞬です。
翌朝、鰺ヶ沢のホテルから津軽半島方向を見ると、遠くに昨夜の観測地の桟橋が見えました。
帰り道に鰺ヶ沢の海の駅に寄りました。
秋田犬わさおの銅像ができていました。
2010年にここに来たときはわさおは元気でしたが、時の流れを感じます。生きていたときのわさおの姿はこちらの記事をお読みください。
・「わさおの店」
次に明るい彗星が現れるのはいつの日でしょうか。
また30年近く待たされるのかなあ。。。。そうすると私はもうこの世にいないかもね。
参考文献
Wikipediaより、
・紫金山天文台
・小惑星地球衝突最終警報システム