S-cableで音声電磁誘導実験です!

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 10月に金沢工業大学の講座でヘルツの1888年の電磁波発見の原典で勉強しました。それ以来,物理の授業で電磁気関係の歴史的実験を再現してみました。
 その授業で活躍したのが「S-cable(パスカル電線)」です。
S-cable


 この長くて太い電線がS-cableです。1978年に杉原和男さんが発明したものです。詳しくは文末の「参考文献」を参照してください。
S-cable
 このケーブルは,10芯ケーブルを輪のようにつないで〈見かけは1本でも中身は10回巻きコイル〉にする画期的な工夫です。これにより大電流の実験が容易にできるようになりました。
 私は杉原さんのS-cale解説サイトの無料頒布を利用して,この実験道具を手に入れることができました。
 おかげで,今日まで電流が作る磁界や,その磁界が磁石に力を及ぼすこと,磁界によって電流が流れることなど電磁誘導までこのケーブルでイメージをしっかり作る授業を進めることができました。本当に素晴らしい実験道具です。


 さて今日の物理の授業は冒頭の実験セットで行う「電流の変化を磁石の動きに変えて音を聞く」実験です。
 これはラジオの音声信号をS-cableに流し,その変化する電流によって,変化する磁界を作り,その磁界が磁石を動かして音の振動を作ります。
 このケーブルと,ネオジム磁石という強い磁力があって初めて実現した実験です。


 イヤホンジャックの電流は小さすぎるので,パワーアンプで増幅します。10W程度は必要というS-cableの解説書に従って,Amazonで安価なものを適当に探しました。これは1790円のもの。ステレオですが,実験はモノラルなので片方のチャンネルしか使いません。
S-cable
 後で考えたのですが,今回使わなかったRチャンネルもラジオとつないで,スピーカーのRとLの両方をS-cableにつなげば10W+10Wで20W分の電流を送れたかもしれません。その方がもっと音を大きくできたかもしれませんね。次回の課題。
 このパワーアンプ基板は裏面のチップがかなり発熱します。ケースに入れて使う場合は,放熱方法を考える必要があります。


 ラジオのイヤホンジャックとつなぐケーブルは,イヤホンを一つ壊して作りました。
S-cable


 紙コップの内と外を挟むようにネオジム磁石をくっつけます。これを電線に近づけて,コップに耳をくっつけると...ちゃんと音が聞こえました。
S-cable


 音を大きくしたければ,ケーブルを巻いて磁界を強めればいいのです。
S-cable


 ケーブルが長いので,授業では各自の紙コップで,数人が同時に音を聞くことができました。高校生たちも,あーだこーだと,議論しながら音を聞きやすい条件を探ってましたよ。みんなで実験できるのが良いですね。


 さて,このようにして音が聞こえるのですが,よく見るとケーブルから少し離れていても音がちゃんと聞こえます。つまり直接電線につながっている必要は無いのです。
 そこでもしも,これをもっとケーブルから離れても音声信号が伝わるなら,これは電線の電流の変化で作られた磁界の変化が,離れた場所にも伝わることを意味します。つまりそれが「電磁波(電波)」なのです。
こういう話につなげて,次回の授業はヘルツの電磁波発見の実験の再現です。

その後の改良

実験結果を踏まえて改良してみました。
LとRの2チャンネルを使うように,イヤホンジャックの信号をLとRに入力。スピーカー線は2つにまとめました。これでスピーカ2台分の電流をS-cableに入力できます。
2ちゃんねる仕様

 紙コップに代えて,鉄の缶にしてみました。これだと磁石は外側に1個ですみます。
鉄缶タイプ

 試したところ,紙コップより音がやや大きくなって,この方が良かったです。缶をたくさん用意しなければなりませんが,それは地道に集めることにしましょう。

参考文献

(1)杉原和男「音の電流による磁場」,『S-cable(パスカル電線)活用術』,2018.8版,25~28ぺ
(2)杉原和男「電磁気学習を革新! パスカル電線「S-cable」 研究室

今回の実験道具

S-cableと一緒に使うと効果的な実験道具です。
アンプはイヤホンやヘッドフォンジャックからの音声増幅用。磁石は「電気ブランコ」に最適です。クランプメーターは杉原さんお勧めの機種です。電線の途中に入れる一般的な電流計ではなく,電線のどこでも電流が測れるものです。S-cableを流れる電流を一周測ることができます。
 音源のラジオは授業時のものは今一つの性能だったので、教室内でも受信感度が良く、イヤホンの出力も大きくて、実験しやすいものを探しました。下のリンクのラジオを試した結果は良好で、コップや缶が振動するのが手に持っていてはっきりわかりました。AC電源で使えるのもよいです。
 『原典でたどる電磁気学史』はエルステッド~ファラデー~マクスウェル~ヘルツなど,電磁気学の基本概念を確立した人の考えを,直接知ることができます。
 『電流と磁石』は古本しか無いですが,小中学校の電磁気関係の授業を画期的にたのしくすることを実現した,仮説実験授業の授業書です。すでに多くの学校で実績を上げてきた古典ですが,未だにこれを超える電磁気入門の教育方法はありません。S-cableで実験結果を示していくと非常に効果的です。いくら良い実験道具でも,すぐれた授業プランがあって初めて効果が出ることもお忘れ無く。(Amazonへのリンクです)


磁気プローブMK

1118207.jpg
 電線のまわりの磁界を見せるのに,小さな方位磁石をたくさん使うのも良いですが,針の動きが平面的なのが欠点です。
 この磁気プローブMK(ケニス理科機器)は,小さな磁石が上下左右に自由に動くので,電線の周辺の磁界を立体的に調べることができて,磁界のイメージ作りに良いです。
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コメント

  • 活用に感謝します

    ご活用に感謝します。

    ステレオアンプの左右接続ですが,大丈夫なんですね!?
    私は怖くてできず,片チャンネルかモノラルアンプしか使ったことがありません。
    ありがとうございます。

    長年取り組んでいると,様々なアンプを使いました。
    しかし,機種によっていろいろはクセというか特性があり,扱い難いことも多々あり。
    自作もするのですが,あまり好きになれません‥

    うみほしさんのように「とにかくやってみる!」強さに恐縮します<m(__)m>

    音声を用いた空缶実験ですが,活用術に書きましたように,
    「エルステッドの実験の応用」と考えられます。
    方位磁針が振動したわけですね!

    ちょっと難しそうでも,よく考えれば原理原則そのもので簡単に理解できます!
    ‥そこが,理科の面白い所だと思います。

    簡単なことを難しく教えることが多いように感じています。



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