X線を霧箱で見る
7月21日に東京のとある中学校でX線を霧箱で見る実験を行いました。
去年の12月にも同じことをやったのですが、あれから霧箱の写真の腕も上がり、再撮影することにしました。
補足
この実験はすべてのクルックス管でできるわけではありません。古いものはX線が出やすいようです。また、この実験では誘導コイルの放電圧を強めたりして、わざとX線が出やすくしています。測定器では1mも離れれば問題ない程度でした。教師がクルックス管のすぐそばで,何年も繰り返し実験しているとレントゲン写真何回分かになり,問題になるかもという程度でした。これは離れて見ている生徒よりも、理科教師の健康問題として考えた方がいいでしょう。''
2012/07/21 10:07:21
PENTAX K5,ISO1600,1/15秒
DA17-70mmSDM(F7.1)
とてもきれいな放射線の雲です。
動画を「霧箱で見る放射線」のコーナーにアップしたのでご覧ください。
これは実験の様子です。霧箱にクルックス管を当てて放電させます。
放電の瞬間に霧箱内で電離が起きて雲ができます。霧箱に突き刺してある青い棒は、霧がきれいに見えるように静電気除去用に使ったフライスティックという、静電気おもちゃです。
チャールズ・ウイルソン(1869-1959)は、イギリスのキャベンディッシュ研究所で、1895年に「人工的に雲を作る実験」を研究し始めました。
それまで「霧(雲)は空気中のチリがなければできない」とされていたのですが、ウイルソンは「いくらチリを取り除いても霧(雲)ができる」ことを発見しました。
ウイルソンは1900年に高感度の「箔検電器」を作って、空気中の電気(イオン)を計れるようにし、さらに1904年に大型の霧箱(当時は空気の急膨張で霧を作っていたため膨張箱と呼んでいました)を作ります。そして、霧の発生原因が「チリよりも小さい空気中のイオン」であることをつきとめました。
そして1895年に発見されたばかりのX線が「空気をイオン化すること」を知って、霧箱にX線を当てると、霧がたくさん発生することを確かめました。
今回の実験はその再現です。100年たって、霧箱も大きく進歩し、手軽に作れるようになりました。
100年前のウイルソンも実験してこの光景を見て、「予想通り」でうれしかったのではないでしょうか。
ウイルソンは研究所の同僚のラザフォードたちと協力して、霧箱を「放射線を見る装置」に仕上げ、自動撮影もできるようにしました。ラザフォードの放射線研究は、この霧箱があってはじめて成し遂げられたと言っても良いでしょう。
ウイルソンは1927年に、霧箱発明の功績でノーベル物理学賞を受けています。
(記事は、もり いずみ「「ウイルソンの霧箱」を発明し、原子物理学の発展に貢献した、チャールズ・ウイルソン」,『Newton 2003年9月号』より)