大府公民館で放射線入門講座をやりました
夏休みも終わろうとする2023年8月26日(土)、愛知県大府市の大府公民館で「わくわく科学教室〈霧箱で自然放射線を見よう〉」を行いました。
大府市の公民館講座として引き受けたものです。今回の対象は小学校5年生以上~大人までとしました。18名で小学生が大多数。中学生と大人が少し。
このサイトでも「霧箱で見る放射線」のコーナーで10年以上にわたってさまざまな「ペットボトル霧箱でできること」を紹介してきました。
また、2018年の『きみは宇宙線をみたか』、2023年の『霧箱で見える放射線と原子より小さな世界』(ともに仮説社から発売)で、「自然現象としての放射線から広がる世界」を紹介してきました。
そうした科学入門教育としての研究の区切りとして、初めて放射線の本格的な科学入門講座を試みました。
参加者一人分のセッティング。
4月に開発したばかりで、仮説社で販売している「厚紙で作る霧箱」がメインです。ドライアイスを入れるカップ、輪ゴム、LEDライト、無水エタノール60mL。放射線測定器(「らでぃ」からの貸し出し)、カウンター、霧箱工作用に、はさみ、ホチキス、定規、ボールペン、養生テープ、サランラップ(またはクレラップ)。霧箱の水平出し用に小さなクサビ、ティッシュ。
最初はレントゲンの発見から。放射線は1895年に「ものを通り抜ける不思議な光=エックス線」として発見されました。
今回借りることができた測定器で、まずは会場の放射線を測ってみます。
隣同士でも数字が同じになりません。これは測定器が不正確なのではなく、放射線はデタラメに飛んでくるので、たまたまセンサーにキャッチされるのはその時次第。だから数字は常に変化するので平均で考えるということ。
みんなの測定器で音を出してもらって、部屋の中に飛んでいる放射線の数をイメージしてもらいます。
そのあと「いったい放射線はどこから来るんだろう」と考えてもらいます。
今回用意した放射性物質です。アトムレンズ(トリウムガラスレンズ)や鉱石、ラジウム時計など「放射線が強い物体」を使って、数字が増える様子を測ります。これらの物体には「放射線を出す原子」が入っていることを簡単に説明。
紙コップに隠した放射性物質を測定器で当てるゲーム。
放射線がものを通り抜ける性質を利用したもの。
最後に部屋の中と外の放射線を予想してもらって実験。
子どもも大人も意外な結果に驚きます。このような実験をやる場合、講師は事前に周辺の放射線を測ってどことどこを比べるかを決めておきます。
休憩をはさんで、後半は霧箱で放射線を見る講座へ。
トリウムを含んだ石をペットボトル霧箱に入れて、カメラで投影します。霧箱でどのように放射線が見えるのかを見てもらいます。
石から出るアルファ線をカウンターで30秒間数えてもらいます。数えた結果から「石の放射能」や「ベクレル」の単位を教えます。
そのあと、石を取り出して「空っぽの霧箱では何個の放射線が見えるか」を考えてもらいます。
ペットボトル霧箱から石を取り出す時にふたを開けてるので、空っぽの霧箱が安定するまでのあいだを使って、霧箱キットの組み立てを行います。厚紙で箱を作るだけという手軽さです。
ドライアイスを配ります。1kgの板を半分に切ったものです。プラカップに入れていきます。これは「パッケージプラザ」で飲食店のテイクアウト用のケースとして売っていたものを活用。ドライアイスは押し込んで水平にします。
箱に60mLの無水エタノールを全体にかけて湿らせるように入れます。底にはエタノールのプールを作ります。そしてラップでふたをします。
できあがった霧箱が冷えるのを待つ間、再び画面に戻って「からっぽの霧箱」で放射線が何個見えるか30秒カウントです。
最後は自分で作った霧箱で身の回りの放射線を見てもらいます。カウンターで数えている子どももいました。この霧箱は高感度で、線源を入れなくても放射線が見えます。
視線方向に斜めにライトを当てると、底の液面での光反射がまぶしくなく飛跡を見ることができます。
数字、音、目で身の回りの放射線を見る体験はこれで終了。
ドライアイスを持ち帰りたい人は容器を持ってきてくださいと事前にアナウンスしておいたので、持ち帰る子どもが何人かいました。作った霧箱で家でも実験できますね。
ドライアイスの注意点として強調したのは、「密閉した入れ物にドライアイスを入れると爆発する」こと。ペットボトルや水筒などに入れてはいけません。気化した二酸化炭素で容器が爆発します。それと冷蔵庫でも冷凍庫でもドライアイスは気化してなくなること。どうせなくなるならどんどん使って遊びましょう。
この講座を実施するに当たっては、準備から当日のスタッフまで、大府市の北井さんはじめ、知多たのしい授業研究会の皆さんの協力を得ることができ、ありがとうございました。霧箱キット開発者の小林眞理子さんにも多くのアドバイスをいただきありがとうございました。
授業の評価
〈A 楽しかったか〉は
「ア、とても楽しかった 12人」
「イ、楽しかった 4人」
〈B わかったか〉は
〈ア、とてもよくわかった 11人〉
「イ、よくわかった 4人」
「ウ、どちらでもない 1人」
楽しんでもらえたようで良かったです。
参加者の感想から
(中2)放射線と放射能とは何なのかがよく分かりました。普段放射線をあまりにすることがなかったので、すぐそこにたくさんの放射線があることに驚きました。
(中2)思っていたよりもたくさんの放射線があったことがおもしろかった。放射線を発する時計を測定器に近づけると、ピッ、ピッ、ピッっと断続的だった音がピーと長く続く音に変わったことがおもしろかった。放射線の数を数えるときに数え切れなくて連打したのがおもしろかった。
(中1)霧箱の中が最初は線が全然見えなかったけれど、慣れてくるとても多くの線が見えてとてもすごかったです。長いものから短いもの、曲がりくねっていたり、ピーンとまっすぐに通っていたりしてとてもおもしろかったです。飛行機の中の放射線の量がここよりも多くなっていたのでビックリしました。
(小5)放射線がいろんなところから出ているのに驚いた。放射線が思ったより一杯あって驚いた。外よりもコンクリートの建物からの方がいっぱいで驚いた。
(小5)放射線を見るとき、本当に見れるかドキドキした。
(小6)放射線が見えてとてもうれしかった。最初のうちは放射線が見えるのかな?と思っていたけど見えてビックリした。
(小6)最初は放射線を見ることはとても難しいことだと思っていたけれど、思ったよりは簡単で、見たら雪のようにきれいで白くて、ゆっくり落ちていてとても幻想的な光景でした。
(大人)放射線を実際に見ることは初めてだったので、本当に見えたのが感動。(「空っぽの霧箱で放射線は何個見えるか」の問題では、実験結果を見て「予想外~~」とつぶやいてました。)
参考文献
山本海行・小林眞理子「自然放射線が見える簡易霧箱の開発とその実験結果」『物理教育通信』、物理教育研究会、No.193、2023年7月、pp.11-21
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