ネイルチップのLED(ルミデコネイル)で電磁波実験

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11月の物理の授業でヘルツの電磁波発見の再現実験を行いました。その記事はすでにこのリンクで書きましたが,そのときは電磁波の遠距離受信装置として,金沢工業大学の講座でもらったLEDを使いました。
 過去の多くの事例ではネオン管かLEDを使うのが普通のようです。しかし,これには回路を自作しなければならないという壁が立ちはだかります。
 ものぐさな私にはできれば市販品でなんとかしたいものだと,その授業以後考えていました。
 昔(20世紀末)は携帯電話のアンテナに付けて,着信時に光るなんてものがありましたが,そういう電波の受信で光ったり音が出たりするおもちゃがあれば……と思っていたのでした。
 そんなことを考えながらネットで探していたとき見つけたのが,タカラトミーが売り出しているヒカルカというおもちゃでした。
 これがヒカルカです。SUICAやnanacoなどのICカードに貼り付けて使います。
 カードリーダーに近づけるとLEDが光ります。

 さっそく実験。パソコン用のUSB接続の非接触型カードリーダーで試しました。ヒカルカは裏紙を剥がして回路を出してあります。

 このままだとペラペラで使いにくいので,両面テープとプラ板を使って,こんなカードにしました。

 カードリーダーからは垂直に磁力線がでているので,カードのコイルをこの角度にすると,磁力線とコイルが並行になって,電磁誘導が起こらないため光りません。

 コイルが磁力線を切るように置くと光ります。
 こういう演示実験に使えますね。


 ところでタカラトミーでは,爪に付けて使うルミデコネイルという製品もあります。

 これはその中身の回路だけで売っていたもの。かなり小さいですが,ICカードタイプより少ない電流で光りそうです。


 ICカードリーダーをPCではなく,USBのACアダプターに直接つないで動かすことができれば,PCを用意する手間も無くなります。
 
 しかし,この方法はUSBコネクタを数回抜き差しして,電源ONのタイミングが合えばうまく動くという結果で,毎回うまく行くわけではありませんでした。それに,このような使い方をして壊れても責任は持てません。あくまで自己責任でお願いします。


 さて,このネイルチップをビニールテープで太さ3ミリ,長さ1mの真鍮線のまん中に貼り付けました。張り付け位置は,カードリーダー上で,どこに金属線を付けると光るか調べて決めました。コイルの端にアンテナが来ると良いことがわかりました。コイルに真鍮線を接触させる必要は無く,近づけておくだけで良いです。真鍮線がまわりに作る磁場でコイルに電流が流れるのでしょう。

 しかし,1m真鍮線では今ひとつ光りませんでした。

 そこで適切なアンテナの長さを探ることに。
 このように太さ6ミリ,長さ1mのアルミパイプを両側からさし込み,出し入れして最も良く光る長さを探しました。



 結局一番さし込んでOKでした。両側に1mで全長2mのアンテナ線です。ただし中に1mの真鍮線も入っています。そして放電する側も,パチンコ玉の電極の距離をいろいろ変えて,最も良く光る放電距離を探します。チューニングできるのがこの装置の良いところです。 

 アルミパイプだけで2mにしても光るのですが,感度は真鍮線を入れた方が高かったです。回路の共振周波数が違うのか?電気抵抗の違いなのかは分かりません。

 真鍮線入りアルミパイプ2mで決定です。数m離れても十分光りました。実験成功です!



近くでは結構明るいです。



遠くで,アンテナの角度を変えて受信状態の違いを見ることもできます。これは電磁波が振動面を持つ横波であることの証拠です。



 アンテナとして手元にあった2mほどのカーテンレールでも試してみました。



 まん中にテープで取り付けます。



 これでも光りましたが,感度はアルミ+真鍮より落ちて,1~2mぐらいが限界でした。



 ネイル用ではなく,ヒカルカのICカードタイプでもできました。

 しかし,LED3個分の電力が必要なためか,1mぐらいで暗くなりました。


 それでも,ヒカルカとルミデコネイルでヘルツの実験ができるようになったのは,大きな収穫です。これならLED回路の自作というハードルは無くなって,より多くの学校で実験しやすくなるでしょう。

ヘルツの実験の再現方法はこのリンクの記事「ヘルツの電磁波発見の実験を再現」をお読みください。

 ヒカルカはいろんなデザインものがでていますが,中身の回路しか使わないので,何でもいいでしょう。最初はカードのままでアンテナを付けて実験したのですが,うまくいきませんでした。裏の黒い被膜をはがして,回路を取り出した方が感度が良いようです。残念ながら、ヒカルカの中身の回路だけの商品は見つかりませんでした。
 非接触型ICカードリーダーは、今では安価なものがたくさん出ています。
 ルミデコネイルは国内品なので早く届きますが,剥がして回路を取り出すのが手間です。これも製品のままではうまくいきませんでした。

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