エイプリルフールっぽかったけど本物だった「木のミステリーサークル」
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昨日は4月1日ということで,毎年各界でウソニュースが発表されますが,そんな中で,私がたまたま見かけたニュース写真が気になりました。
それは木のミステリーサークル。
これは「宮崎の森林に「ミステリーサークル」が出現…“想定外”の自然の力が働いていた」というFNNニュースで,日付は「2019年2月28日 木曜 午後6:00」となっています。
4月1日発表じゃないので,エイプリルフールとは関係なさそうなので,このニュースは本物なのかな?と思ったのですが,「ひょっとして日付も偽物?」という気もしました。
記事の検証
このニュース写真もいかにも「できすぎ」で合成っぽい気がしたので,半信半疑で裏付け調査を実施。
すると,他社のニュースでも同じ記事があるのを見つけました。
朝日新聞ニュースでは,「2018年12月27日18時42分」の日付で動画付きの記事,
「森林に二つの「ミステリーサークル」なぜ? 宮崎・日南」
がありました。
ヤフーニュースでは
「木のミステリーサークル」
という2018/11/20(火) 11:22配信の記事があり,宮崎日日新聞が出典で,探した中ではこの記事が一番早いようです。
マニアックなところでは「日刊木材新聞」のフォトギャラリーにもこんな写真がありました。
宮崎南部森林管理署が林分密度試験林をドローンで撮影(2018年12月13日付5面).
これらの記事によると40年以上前の「植林実験」でこうなったということなので,最近の話ではありません。
であれば,グーグルマップの航空写真にもあるはずです。そこで探してみると,ちゃんとありました。誰かがマークしてくれてありました。
地図モードでは山の中で何も出ませんが,写真モードにすれば丸く植えられた木が見られますよ。
林野庁によれば,この実験ではこんなふうに木が植えられたそうです。
各円ごとに木の密度を変えて植林して,成長の違いがあるかという実験でした。円形なのは中心から全体を見渡せるようにということのようです。
詳しい実験の情報は,このサイトにありました。→クリック「林分密度試験林(ミステリーサークル)」
実験結果を見ると「木の密度の高い中心ほど木の高さが低い」となっていて,実はこれが定説が間違いであった実験結果だということです。
植物の密度を高めれば,1本当たりの資源は減るので,木が小さくなるのは当然と思えるのですが,この実験した当時は「植栽密度によって木の高さは変わらないというのが定説だったが,覆す珍しい現象が起きている意味でもミステリー」だそうです。
また,この実験後35年の木で分かったことは,
「木を植える密度が高いほど,1ヘクタールあたりの木の量が多くなる」傾向があったそうです。しかし,「1ヘクタールあたり2300本をこえると木の量は頭打ちとなり,それ以上高密度に植えるとかえって木の量は減る」ということです。(*1)
この結果,林業でどれぐらいの密度で木を植えるのがもっとも木の量が多くなるか,という投資効果を見積もることができます。この実験が始まって数十年経ってますが,立派に林業経営のためのデータとして役立ってるんですね。
判定は「本物」
ということで時期の異なる複数の情報源で確認できたので,これは「本物である」とわかりました。グーグルマップには2か月ほど前に集中して「珍百景で見た」というコメントが複数あったので,これで有名になったのかもしれません。
本来は植栽50年で伐採予定なのだそうですが,人気の高まりで観光地化する話もちらほら。展望タワーができるかもしれませんね。
(追記:2023.7.18)その後駐車場が整備され,実験林へのアクセスが改善されました。
参考文献
(*1)yfh_731「木のミステリーサークルで考えたこと」(2019.6.23)
