スピンサリスコープ(5)

Tag: 放射線 スピンサリスコープ 科学史

 今回は何を変更したかというと,「拡大撮影のやり方」です。これまでは,レンズとカメラの間に「延長チューブ」を付けて高倍率撮影をしてきましたが,50mm(F1.2)のレンズではピント性能がかなり悪くなっていました。これは原理的にこの焦点距離と明るさのレンズが,拡大撮影に向かないから仕方がないですが,この撮影は一瞬の光を撮るので明るいレンズでないと不可能です。
 もう一つの方法として「リーバースアダプターでレンズを逆さまに取り付ける」という方法もあります。
 今回の写真はこの方法で撮りました。今までよりα線の光点に対して広くピントが合っています。
 では作例を紹介。これは蛍光板4枚使用しています。
磁石無し30秒
2013/05/18 06:45:24
PENTAX KIIs,ISO51200,露光30秒。
SMC PENTAX 50mm F1.2をリバースアダプターで取り付け。

 これはラジウムのα線ですが,30秒連続だと,1つ一つの光点がよくわからなくなりますが,迫力はありますね。

 今回は,前回のセットに加えてさらに,あまった磁石をリング磁石の上に付けてみました。
上に磁石追加

 あまり偏りには変化無しで,私の手持ちのネオジム磁石ではこれ以上曲げるのは無理でした。

 さらに今回は2ヶ月待たされてようやく届いたポロニウムの針で,磁石偏向実験。
ポロニウム針
2013/05/18 18:34:26
 多少左に偏っているのがわかりますが,やはりα線を磁石で曲げるのは困難というのは同じです。

 ついでにβ線源のストロンチウム90でも蛍光板が光るかテストしました。
β線
2013/05/18 18:59:54
露光60秒。
 何も写りませんでした。やはりこの蛍光板で観測できるのはα線だけのようです。しかし,β線で光るものがないかというと,そうではありません。たとえば霧箱のコーナーにある,β線で光るキーホルダーです。また,今では絶滅寸前のブラウン管のテレビも,電子を蛍光物質にぶつけて光らせて画像を作っていました。β線にはそれ専用の蛍光板があるようですね。

 今回もまた磁石の組み替えの時に,力負けして手を挟んで血豆が出来ました。ネオジム磁石で強力な磁力線を作るというのは,「NとSを向かい合わせる」ということです。そこにはものすごい引力が働きます。もし,まねされる方はくれぐれも怪我の無いように,よくセッティングを考えてから行ってください。

 さてスピンサリスコープの実験は,さらに強力な磁場を作る方法を思いつくまで,これで一区切りとします。
 私の実験をやってみたい方は,私が道具を買った販売店を紹介しておきます。
 ●α線の光を撮影したスピンサリスコープ。
日本スリービー・サイエンティフィック株式会社(リンク)
 実験に使ったスピンサリスコープを買いました。現在では蛍光板だけの入手はできません。スピンサリスコープ本体を購入してください。
 アマゾンでも取り扱っています1個27675円(2024年2月2日現在)です。
61vHb6M06bL._SX466_.jpg(Amazonのリンク)

 ●ネオジム磁石はここで買いました。大きいのがたくさんありますが,吸引力を見ると取り扱い厳重注意です。
マグネットジャパン(リンク)

 ●放射線源はここで買いました。
IMAGES(リンク)
 針状のものが霧箱にも使えて便利でしょう。α線はPo-210,β線ならSr-90,陽電子を見るならNa-22と特性がありますので,目的に合わせて選べます。単位は「マイクロキュリー(μCi)」で表記されています。1μCi=37000Bqです。
 以上,参考にしてください。

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コメント

  • 蛍光板の入手について

    スピンサリスコープの蛍光板、とても高感度でよいですね。最近で、スピンサリスコープの蛍光板単体で買えるところがあれば教えていただきたいです。よろしくお願いいたします。


  • 単体では売ってないようです

    この実験に使っている蛍光板は現在、本体付属でしか販売していません。
    私の知る限り、蛍光板だけの販売はやっていないそうです。
    販売店ではなく、メーカーに直接お願いしてみるしかないでしょう。
    このスコープはドイツメーカーのものです。
    アメリカメーカーの蛍光板もテストしたことがありますが、この記事の写真ほどの効果は無かったです。



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