ペットボトル霧箱の作り方(2018.6.12改訂版)
ここでは林さん原案のペットボトル式霧箱の作り方を紹介します。
エタノールは火気厳禁です。過去に霧箱の発火事故も起きているそうです。また,講座などで一度にたくさんの霧箱を使う場合は,換気を十分に行ってください。
もくじ
材料
(1)2リットル以上のペットボトル(できれば4リットル)。
(2)サランラップやクレラップなどのラップフィルム。
(3)アルミホイル。
(4)輪ゴム3本。
(5)ドライアイズを置くための、口の広いカップ麺の容器または発泡スチロールの板または新聞紙。
(6)黒い画用紙(つるつるの紙は不可。必ず画用紙で。)
(7)黒い植毛紙(黒フェルトは光って見にくいので不可)。
メーカーにもよりますが,ある植毛紙を使ったときに,「のり」でアルコールがドロドロして,蒸発が不十分で飛跡がうまく出ないことがありました。そんな場合は,アルコールで良く洗ってから水洗いして乾かせば使えます。講座などで新品の植毛紙を使う場合は予備実験で確認しておきましょう。
(8)無水エタノール(消毒用は水分が多くて不可)。
(9)LEDライト。(100円ショップのLED懐中電灯など。明るい方が見やすい。)
(10)ドライアイス1kg(板状が良い。1kgを半分に割れば2個分で使える)。
材料の入手先
黒い植毛紙
無水エタノール
ドライアイス
作り方
1.
これは2リットルのペットボトルを切ったものです。
大きくしたいときは4リットルのペットボトルにします(私が撮影用に使ったのは焼酎の4リットルペットボトル)。2リットルでも4リットルでも高さは10cmの円筒形になるように切ります。これは経験値です。これより長くても短くても成功率が下がります。
2.
サランラップやクレラップなどのラップフィルムを被せて,輪ゴムで止めます。
3.
その上にアルミホイルを被せて輪ゴムで止めます。これで底が完成。
4.
底に丸く切った黒い植毛紙を敷きます。(黒いフェルトや黒画用紙では光が反射して見にくい)。
丸く切るときは多少の隙間は気にしなくていいです。底面は光を反射しないものでなくてはなりません。
★底の作り方には「黒いベルベット布で作る方法」もあります。詳しくはこちらをご覧ください→クリアファイル霧箱の作り方
5.
内側に黒い画用紙を丸めて入れて側面にします。固定する必要はありません。画用紙の役割は中を暗くすることと、アルコールをしみこませて、蒸気を発生させることです。黒画用紙以外はアルコールがしみこみにくいので使えません。
6.
無水アルコールを入れます。底の起毛紙がぎりぎり沈む深さ(3~5mmの範囲)のアルコールのプールを作ります。側壁の黒画用紙にもアルコールをかけてぬらして、内部のアルコール蒸気を増やします。
7.
ラップを被せて輪ゴムで止めてふたをします。
8.
発泡スチロール板にドライアイスを乗せます。ここでは1kgの板(500円ほど)を使いました。半分に割れば霧箱2個分になります。新聞紙や発泡スチロール板に乗せます。もし板状のドライアイスが手に入らなかったら、底の浅いトレイにドライアイスの粒を入れて、小槌などで叩いて砕き、平らな面を作ります。霧箱の底に密着させないとうまく冷えてくれません。
9.
霧箱をドライアイスの上に乗せます。暑いときは霧箱下半分を新聞紙で包むといいです。
10.
冷えるのを待ちます。だいたい5分~10分ぐらいです。上下の温度差が必要なので,霧箱全体は冷やしません。ドライアイスは底面だけ冷やすようにします。ライトと視線が同じ方向になるように,光を当ててしばらく待ちます。電球よりも輝度の高いLEDライトが見やすいです。見にくいときはカーテンなどを引いて部屋を薄暗くする程度で十分。
霧箱の飛跡がよく見えるのぞき方は
「照らす方向と視線を一致させる」ことです。小さい霧箱ならこのようにカップ麺の容器に入れて,ティッシュで隙間を埋めるとドライアイスが長持ちします。大型の筒で作ったときは発砲スチロール板で箱を作ってドライアイスを入れて、霧箱を入れます。
一般的注意
終わったらエタノールは容器に戻します。エタノールのついたラップやアルミホイルは、水で良く洗ってアルコールを落としてから捨てます。そうしないといつまでも可燃物なので危険です。筒や起毛紙、黒画用紙は何度でも再利用できます。水洗いして乾かせばいいでしょう。
無水エタノールを捨てる場合は大量の水で薄めます。エタノールは水に良く溶けるので、火がつかないぐらい薄めて(お酒より薄ければ良い)捨てます。薄めればお酒と同じです。
霧箱に線源を入れる場合,最初はまず何も入れないで,自然放射線が見えることを確認してから,線源を入れると良いです。
時間がたつと見えにくくなる場合,静電気の蓄積が考えられます。その場合はふたを指でなぜるか、乾いたティッシュで軽く拭けば復活します。
ウラン鉱石やラドンなど強い線源を入れると,いくら待ってもすでに静電気が蓄積していて見えないことがあります。線源があるのにしばらく待っても見えなかったら,ティッシュでふたを拭いて静電気を取ります。
「冷やしすぎて見えない」場合もありました。ふたが曇ってくるほどだと大抵冷やし過ぎです。その場合は,霧箱をドライアイスの上に載せるだけで十分です。
原作者の林さんによればポリメチルペンテンのラップ(180度耐熱ラップ)が最も見やすいそうです。商品としては「生協(COOP)」の耐熱ラップとリケン フォーラップがポリメチルペンテン製でした。定番のクレラップやサランラップも見やすかったです。100円ショップの安いラップは透明度や平面性が悪くて、あまり使い勝手が良くありませんでした。
プロパノールでも問題なくできます。海外では禁酒(アル中患者が薄めて飲まないように)との関係でドラッグストアでエタノールが入手できない場合があります(アメリカではプロパノールのみ、カナダでは無水エタノールも売ってました)。その場合、プロパノールが売られていることが多いです。また「無水」でなく「消毒用」を使った場合、水分が凍って白くなってきますが、30分ぐらいなら十分使えます。氷を時々すくい取れば何とか使えます。
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