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北硫黄島皆既日食

もくじ

日食の概要

 2009年7月22日、日本の南海上のトカラ列島から硫黄島付近にかけて皆既日食が見られました。

 この日食の皆既帯はこんな感じ。(時刻は世界標準時:日本時間は+9時間です。)中でも硫黄島の西側が今回の最大継続時間で6分30秒超えます。
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皆既帯NASA

 今回の日食ツアーのパンフレットです。
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画像の説明
 私たちは最大皆既の場所へ向けて、客船「ぱしふぃっくびいなす」に乗りました。この船ではNHKの生中継も計画されていました。

2009年7月20日 横浜港を出港

 横浜港大桟橋へ来ました。これが今日乗る船です。
ぱしふぃっくびいなす
2009/07/20 14:37:47

 ドラが鳴り響き、テープで結ばれて、ドラマで見たような出港風景。
 実は初めて知ったのですが、このテープはたまたまそのとき桟橋にいた人達に投げて結んでいます。船を見に来た人なら誰でも参加自由なイベントだったんですねえ。
出港

出港

 なんとそのとき桟橋から撮った写真に我々が写っていました。撮影した方からいただきました。
出港

 船に乗るとすぐに訓練がありました。救命胴衣着用!
訓練
2009/07/20 17:00:25
 
 デッキへ集合。救命艇のそばに集まります。
訓練

 そのあとは船室でくつろぎます。
くつろぎ

 翌朝7月21日は荒れた天気でした。梅雨前線の下を通過中です。大きな船なので揺れはほとんど感じなくて、船酔いは大丈夫でした。
荒れた海
2009/07/21 05:52:56

 船内散策。きれいですね。
船内

 さて、今回は我々以外にもたくさんのツアーが企画され、それぞれの観測地へ。悪石島や中国の上海など各地へ散っています。悪石島などトカラ列島のツアーは倍率が高く抽選になったほどの人気でした。しかし、お天気ばかりはそのときの運。今回はどうでしょうか。
 実は横浜を出航してからずっと雨模様で、天気が心配でした。
 これは日食当日の2009年7月22日11時30分の雲画像です。このとき私たちの船は太平洋上の黒い影の中にいました。
 写真の通りこの年は梅雨明けが遅く、梅雨前線が幅広く皆既帯に居座っていました。
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皆既の瞬間
 
 実は日食の前日、乗船していた日食情報センターから観測場所について相談されました。そこでNHKの衛星インターネット回線を借してもらうことになり、気象庁の数値計算の専門天気図をダウンロードしました。それを見て「梅雨前線が非常に幅広いので、できるだけ前線の南まで出てしまった方がいい」という意見を伝えました。
 その夜は「本当に明日晴れた区域に出られるか」が心配でした。

2009年7月22日 日食当日

 雲の切れ間に夜明けの太陽が。私はこれを見てほっとしました。
夜明け
2009/07/22 04:58:29

 ようやく梅雨前線を抜けることが出来、青空が広がりました。
 北硫黄島が見えました。
北硫黄島
2009/07/22 07:20:17

北硫黄島

 スポーツデッキは人で一杯になりました。私は後ろの方へ場所を取りました。これは同乗された方からいただいた写真です。矢印のところが私の観測場所。
スポーツデッキ

観測準備
2009/07/22 09:08:58

 てるてる坊主もスタンバイ。
てるてる坊主

 船上では天文学者の村山定男さん(2013年8月13日に亡くなられました)のカウントダウンのアナウンスがあり、いよいよ日食の始まり。ダイヤモンドリングです。歓声が上がります。
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始まり
2009/07/22 11:25:09
PENTAX K7,ISO200,1/125秒
DA☆300mm(F5.0)

フラッシュスペクトル

 今回は日食の分光写真も挑戦しました。月に隠される寸前、太陽のスペクトルが七色の連続した光の帯から飛び飛びの水素輝線になります。これは太陽本体が隠されて、太陽表面の彩層の光だけが見える瞬間です。
 これをフラッシュスペクトルといいます。

スペクトル
RICHO GX200の動画より。

コロナの広がり

 そして太陽は月と重なり、コロナの広がりが。(クリックで拡大)
コロナ
PENTAX K7,ISO200
DA☆300mm
 船上は暗闇に包まれます。水平線は夕焼けのように赤く光染まります。何度見てもこの360°夕焼けは一番好きな光景です。
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月の影の中
2009/07/22 11:29:41
PENTAX K200D,ISO200,0.7秒
DA Fisheye10-17mm(F8)

 今回は最長クラスの6分以上の長い皆既です。
 撮影の合間に双眼鏡で眺める余裕も。(クリックで拡大)
双眼鏡で見る

 この船からはNHKの生中継が行われていました。天文学者の渡部潤一さんが解説です。
船上中継

 思いっきり露光時間を延ばすと、月の模様が写りました。新月の月です。
新月
2009/07/22 11:28:48,1.6秒
 月の形がゆがんでるのは船の揺れのためです。船上ではシャッター速度を遅くするとぶれてしまいます。

 そして皆既の終わり。ダイヤモンドリングに拍手が起こります。
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終わりのダイヤモンド
2009/07/22 11:32:00,1/30秒

 皆既が終わっても日食は続きます。
 ピンホールを写しています。
ピンホール中

ピンホール

 部分日食中のピンホールです。欠けた太陽の形に写ります。
 カバさんの力作です。(クリックで拡大)
ピンホール
2009/07/22 11:10:20
RICHO GX200

 なお、カバが見た日食の様子はこちらでご覧くださいクリック

 祭りが終わって、静かなデッキ。
祭りの後

 この日の海はとても穏やかで、すばらしい青さでした。
海の青

海の青

硫黄島周回

 船は皆既帯を離れて、硫黄島周遊に出かけます。
 硫黄島が見えてきました。鏡のような海。
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硫黄島
2009/07/22 16:01:38

硫黄島遠景

 この島は太平洋戦争の激戦地。すり鉢山にはそのときの砲撃の跡が生々しく残っているそうです。

すり鉢山

すり鉢山近景

 船が方向を変え、硫黄島の向こうに南硫黄島が重なります。

南硫黄島

 日本の最果ての島です。あそこより先はマリアナ諸島へ。

 カツオドリ。
カツオドリ

 硫黄島が遠ざかっていきます。
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硫黄島の近景と遠景
 この連続写真は硫黄島との別れを惜しみつつ、「大地球形説」の証拠として撮りました。大地は平らではなく球形に曲がっています。そこで遠ざかる島を見ると「下の部分から水平線に隠れていく」という現象が起こります。硫黄島でそれを確認してみたわけです。横浜出港時の富士山でもやりたかったのですが、それは天気が悪くてだめでした。

 帰り道にスコールが降り、虹が見えました。

虹

 こうして、日食の一日が暮れていきました。

夕暮れ

船で売られていた記念のTシャツです。

Tシャツ

島巡り

 帰りの航海は島を通過していきました。


 やもめ岩を通過。高さ99mあるそうです。海に突き出た高層ビルみたいですね。(クリックで拡大)
やもめ岩
2009/07/23 10:04:24

 そして鳥島を通過しました。(クリックで拡大)
アホウドリ営巣地
2009/07/23 12:41:02

 その後は日本に接近するにつれて天気が悪くなりました。梅雨前線はまだ健在です。

船長さん
2009/07/24 09:18:07
 翌朝、横浜に帰ってきました。船長さんありがとうございました。

航海の軌跡

 今回の船の航路です。
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ぱしふぃっくびいなす航路
(日食情報センターのGPSデータより作成)
 これを見ると、当初は最大皆既の場所へ向かっていたのが、途中から硫黄島の東へ進路変更しているのがわかります。梅雨前線の向こうへ出ようとしたということでしょう。

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観測コース
 観測中にジグザグしているのは「雲をよけていた」からだそうです。観測成功も船の操船のおかげですね。

 気象衛星のとらえた日食の時の「月の影」の通過アニメです。月の影は西から東へ高速で移動していきます。これを追いかけるには超音速が必要だそうです。
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画像の説明

全行程の動画

 横浜港出発から日食,硫黄島,鳥島,横浜港への旅の動画です。