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ペットボトル霧箱の作り方(2023.8.29改訂版)

 ここでは林さん原案のペットボトル式霧箱の作り方を紹介します。

注意

エタノールは火気厳禁です。過去に霧箱の発火事故も起きているそうです。また,講座などで一度にたくさんの霧箱を使う場合は,換気を十分に行ってください。


もくじ

材料 

(1)2リットル以上のペットボトル(できれば4リットル)。
(2)サランラップクレラップなどのラップフィルム。
(3)アルミホイル
(4)輪ゴム3本。
(5)ドライアイズを置くための、口の広いカップ麺の容器または発泡スチロールの板または新聞紙。
(6)黒い画用紙(つるつるの紙は不可。必ず画用紙で。)
(7)黒い植毛紙(または黒いベルベット。黒フェルトは光の反射が多く飛跡が見にくいです)。

注意

新品の植毛紙は使用前に「のり」をアルコールで洗い流します。アルコール(消毒用でも良い)に漬けて良く洗ってから水洗いして裏面(黒くない側)のぬるぬるが取れるまで水洗いします。乾かして使用します。これは最初の1回だけ行えば良く、あとはそのまま何度でも使えます

(8)無水エタノール(消毒用は水分が多くて不可)。
(9)LEDライト。(100円ショップのLED懐中電灯など。明るい方が見やすい。)
(10)ドライアイス1kg(板状が良い。1kgを半分に割れば2個分で使える)。

材料の入手先(Amazonのリンクです。)

ほとんどのものはホームセンター等で買えますが、探すのが面倒、近くに買える店がないなどの場合は通販を利用すると良いでしょう。学校の場合はこのリストを参考に同等品を発注すると良いでしょう。

・黒起毛紙(粘着剤無し。使用前にアルコールにつけてぬるぬるを取る)
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・黒画用紙四つ切り(5枚)
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・無水エタノール400mL(飲用不可品)
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・ドライアイス 1kg×3枚。(通販では輸送途中で減ることも考慮しましょう)
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・水平調節用クサビ(霧箱は水平に置かないと飛跡がよく見えません)
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作り方

1.

切り方

これは2リットルのペットボトルを切ったものです。
 大きくしたいときは4リットルのペットボトルにします(私が撮影用に使ったのは焼酎の4リットルペットボトル)。2リットルでも4リットルでも高さは11cmの円筒形になるように切ります。これは経験値です。これより長くても短くても成功率が下がります。



2.

筒の内側の大きさに合わせて起毛紙に線を引きます。



3.

書いた線より外側1cmぐらい外側を丸く切ります。



4.

書いた線のところまで切り込みをたくさん入れます。

★底の作り方には「黒いベルベット布で作る方法」もあります。詳しくはこちらをご覧ください→クリアファイル霧箱の作り方



5.

起毛紙の黒い面を下にして筒に乗せます。



6.

起毛紙の上からこのようにラップをかぶせます。



7.

ラップの上にアルミホイルをかぶせ、輪ゴムでとめます。



8.

筒の深さに切った黒画用紙を丸めて入れます。これはアルコール吸い上げ用なので、つるつるした紙は使えません。



9.

無水エタノール(または変性アルコール)を入れます。底の起毛紙が沈むぐらいの液面にします。3ミリ~5ミリぐらいでしょう。



10.

ドライアイスの上に乗せます。液面が水平になるようにします。
ドライアイスをカップ麺の容器などに入れるのも良いです。



11.

冷えるのを待ちます。だいたい5分~10分ぐらいです。上下の温度差が必要なので,霧箱全体は冷やしません。ドライアイスは底面だけ冷やすようにします。ライトと視線が同じ方向になるように,光を当ててしばらく待ちます。電球よりも輝度の高いLEDライトが見やすいです。見にくいときはカーテンなどを引いて部屋を薄暗くする程度で十分。


霧箱の飛跡がよく見えるのぞき方は

のぞき方

「照らす方向と視線を一致させる」ことです。小さい霧箱ならこのようにカップ麺の容器に入れて,ティッシュで隙間を埋めるとドライアイスが長持ちします。大型の筒で作ったときは発砲スチロール板で箱を作ってドライアイスを入れて、霧箱を入れます。



一般的注意

終わったらエタノールは容器に戻します。エタノールのついたラップやアルミホイルは、水で良く洗ってアルコールを落としてから捨てます。そうしないといつまでも可燃物なので危険です。筒や起毛紙、黒画用紙は何度でも再利用できます。水洗いして乾かせばいいでしょう。
無水エタノールを捨てる場合は大量の水で薄めます。エタノールは水に良く溶けるので、火がつかないぐらい薄めて(お酒より薄ければ良い)捨てます。薄めればお酒と同じです。
霧箱に線源を入れる場合,最初はまず何も入れないで,自然放射線が見えることを確認してから,線源を入れると良いです。
時間がたつと見えにくくなる場合,静電気の蓄積が考えられます。その場合はふたを指でなぜるか、乾いたティッシュで軽く拭けば復活します。
ウラン鉱石やラドンなど強い線源を入れると,いくら待ってもすでに静電気が蓄積していて見えないことがあります。線源があるのにしばらく待っても見えなかったら,ティッシュでふたを拭いて静電気を取ります。
「冷やしすぎて見えない」場合もありました。ふたが曇ってくるほどだと大抵冷やし過ぎです。その場合は,霧箱をドライアイスの上に載せるだけで十分です。
原作者の林さんによればポリメチルペンテンのラップ(180度耐熱ラップ)が最も見やすいそうです。商品としては「生協(COOP)」の耐熱ラップとリケン フォーラップがポリメチルペンテン製でした。定番のクレラップやサランラップも見やすかったです。100円ショップの安いラップは透明度や平面性が悪くて、あまり使い勝手が良くありませんでした。
プロパノールでも問題なくできます。海外では禁酒(アル中患者が薄めて飲まないように)との関係でドラッグストアでエタノールが入手できない場合があります(アメリカではプロパノールのみ、カナダでは無水エタノールも売ってました)。その場合、プロパノールが売られていることが多いです。また「無水」でなく「消毒用」を使った場合、水分が凍って白くなってきますが、30分ぐらいなら十分使えます。氷を時々すくい取れば何とか使えます。

参考文献(Amazonのリンクです。)

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