ファラデーのテムズ川の実験は本当に失敗だったのか?(とりあえず完結編)
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ファラデーのテムズ川の電磁誘導実験は本当に失敗だったのか?さらなる真実の追究のため,今度は学校のプールで実験してみました。
前回の「ファラデーの川の電磁誘導実験は本当に失敗だったのか?」では,「ノイズがファラデーの実験を邪魔したのかもしれない」という可能性を書きました。
そこで今回は追加実験として「静止した水でどれぐらいのノイズがあるのか」を調べることにしました。
プールの向きは南北の磁力線に沿っています。
①西側
まずは西側の辺から測ってみます。前回までのように100mの電線では重くて取り回しが大変なので,今回は5m×2本で実験しました。これなら一人でも実験できます。
おおむね右向き電流ですが,時々反対に大きく変化して不規則な電流の向きでした。磁力線の下向き成分を水流が横切ると仮定すれば,水の流れが推測できます。
2019/04/04 09:55:37
PENTAX MX-1
動画の方が良く分かるでしょう。
②北側
続いて北側。+10~+15で変化しましたが,電流の向きは安定しています。
2019/04/04 10:10:01
結果はこのようになります。
③東側
東側は-20~+20で針が動き回り非常に不規則。
電流の向きは特定できませんでした。
この辺りの水の流れは不規則な乱流状態だと思われます。
④南側
電流の向きは安定していました。
2019/04/04 10:23:09
結果のまとめ
さてプール全体の電流には何か一貫性があるのでしょうか。それとも不規則なノイズに過ぎないのでしょうか。
実験した時は強い北西の風が吹いていて,プールの水にも波ができていました。
電流の向きから水の動きを推定すると,北西の風で吹き寄せられて,プールには南東方向の流れができていて,プール東側にぶつかって乱流になっていたのではないでしょうか?当初の実験の目的とは違ってしまいましたが,この日は風が強くて流れができてしまったとすれば,「水流の東向きと南向き成分の電流を感知していた」のではないか?
この結果を見る限り,不規則なノイズというよりは「電流の向きには水の流れに応じた規則性がある」と考えた方が良いのではないでしょうか。
さらに,この実験結果では「どの方向に水が流れても電流は生じる」と言って良いように思えます。地球の磁力線は日本では水平面に対して49度傾いています。つまり,どの方向の流れでも「磁力線の垂直成分が下向きにささっている」ということになります。ですから,磁石に対して金属板を動かすと渦電流が生じるのと同じようなことが流れる水で起こるのでしょう。川の向きや橋の向きに関わりなく,水流は下向きの磁力線を横切るのです。だからプールの四方のどこでも電流が感知できたと考えられます。
ファラデーはテムズ川の流れに対していろんな方向に電線を張って実験しています。結果はすべての場合で何らかの電流を検知しています。実験結果の解釈には,テムズ川で観測された電流と,その場所の流れの向きを十分考える必要があったでしょう。ファラデーは最終的に電流と水流の関係に一貫性が見いだせなかったので,「不規則」と判断したのかもしれません。ファラデーがこの実験を行ったのは,電磁誘導を発見してから間もない頃です。新発見早々の実験ですから,思いもよらない結果に遭遇しても不思議はありません。私自身も実験してみて,最初の予想と違っていたことはいくつもありましたから。
ファラデーが最初に想い描いたような,川の流れの方向で磁力線の横切り方が大きく違うのは,「磁力線と地面が平行な赤道付近だけ」なのではないでしょうか?
赤道の磁力線なら,南北方向の流れでは磁力線を横切ることができません。そうなると「東西の流れ」と「南北の流れ」で,生じる電流に顕著な差が測定できるかもしれません。
そうなると今度は赤道付近の川で実験しなければなりませんね(^^;)。
新たな実験はまた新たな予想を生みます。それが科学の楽しみであり醍醐味なのです。
彼は本当に失敗していたのか?果たして真実は?
実験中はプールでくつろいでいる鴨のみなさんを驚かせてしまいました。(^^;)
我が校の冬の風物詩です。
コメント
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これは単極誘導では?
この実験は、電磁誘導ではなく単極誘導だと思います。単極誘導は訳の分からない所があります。
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それには賛成できません
電磁誘導は「磁力線と導体の速度ベクトルの両方に直角に電流が生じる」という現象です。そもそも「磁極」とは,磁力線の出口をN極,入り口をS極としているだけで実体はありません。この事例が単極誘導で電磁誘導ではないという説には賛成できません。
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磁場の強弱がありません
電磁誘導は磁場の強弱によるものと理解しています。この川の場合磁場の強弱は有りません、磁場を横切っているだけと思います。もし船に乗り接点のない回路で実験すれば起電力は発生しないと思います。
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磁力線を横切っているのでは?
物体から電流を取り出すには、必ず回路を作らなくてはなりません。電磁誘導の法則とは,「回路の中を横切る磁力線の数に比例して回路に起電力が生じる」というものです。一様な磁力線の中でも回路が横切れば,単位時間当たりに横切る磁力線の本数に比例して電流が生じます。
磁場の強弱とは磁力線の密度に過ぎません。密度の高い磁力線を横切れば「単位時間当たりに横切る磁力線の本数」は増えます。
磁力線の密度変化が結果として,回路を磁力線が横切ることになるだけではないですか。
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均一磁場です
均一磁場においてコイルが磁力線を切れば、起電力が打消しあって電流が流れません。その為半分の線の速さを違えています。これがファラデーの時代にはハッキリしなかったようです。
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矛盾するのですか
よく分かりませんが、単極誘導というのは、磁力線を導体が切ると起電力を生ずるという話と矛盾するのですか?
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違いがあります
電磁誘導の公式は単位時間当たりの磁場の密度の変化で起電力が発生します。単極誘導の公式は、単位時間当たり均一磁場を移動する事で起電力が発生します。基本的には両方とも磁場を切る事には違いがありませんが、電磁誘導の場合打ち消さない方法で、単極誘導は打ち消すので片方の速度を変えています。
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もう少し詳しく
>電磁誘導の場合打ち消さない方法で、単極誘導は打ち消すので片方の速度を変えています。
この部分もう少しわかるように説明していただきたいです。
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磁場の空間固定説の崩れでは
川の流れの方向の違いにより電流の向きが変わった事により、磁場の空間固定説が崩れ、単極誘導実験三種類の説明がつかなくなった。としたら乱暴な解釈でしょうか?
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どういうことですか
単極誘導実験三種類というのは、どういうことですか?
すごく興味深いです。
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単極誘導の3つの実験
ネットで単極誘導を検索すれば出てきます。今でも色々と意見があるようです。私も前に実験を重ねて、ユチューブに投稿しています。1 磁石の下で円盤を回転しますと起電力が生じます。2 円盤を固定し、磁石を回転しますと起電力は生じない。3 磁石と円盤を同時に回転すると起電力が生じる。以上3種類です。この文章では、不思議ですが回路全般を見ると理解出来るようです。
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3が不思議ですね
とくに3が不思議ですね。円盤と磁石は相対的に運動してないのでしょう?
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磁場は磁石の紐付きではない
磁石を回転しても磁力線は一緒に回転しないなら1~3は説明されます。
これも力を物体にくっついたひものようなものとイメージしてしまうから生じる間違いであるように思えます。つまり多くの人は「力は物体めざして直線的に働く」という「遠隔力イメージ」や「物体が物体を引っ張る」というイメージがどうしても抜けないのです。
磁石本体が作る磁場はあくまで「周囲の空間に存在するエネルギー」です。磁場という空間は仕事ができる空間ですから「エネルギーのある空間」です。
ファラデーが発見した「磁石に極など存在しない」という事実は,磁石の極のような特定部分が力を出して(磁力線を出して)いるわけではなく,一定の形の磁石のまわりには一定の形をした空間エネルギーが存在しているというイメージの方が,正しい場の概念であるということです。
磁場を磁石にくっついたものと考えてしまうから2や3が不思議に見えてしまうのではないでしょうか。
2と3では磁力線(というより磁場空間)が導体に対して静止しているので,誘導電流が生じないのでしょう。回転対称な磁場の回転軸を回しても磁場自体は何も変わりませんから,静止しているのと同じです。
ネットで単極誘導を見ると,中には電磁誘導と違う別の神秘的作用や未発見の作用のように説明しているサイトもあります。でも,電磁気学は古典的レベルでは完成された理論ですから,そう易々と新概念が入りむ隙はありません。
ファラデーがなぜテムズ川の実験で答を出せなかったかは,「テムズ川の現象が単極誘導だったから」という説には疑問符を付けます。
むしろ「流れに対してどの方向に電線を張っても電流が生じた」ということを解析するのが,あの段階では難しかったのではないかと思えます。
ファラデーがテムズ川で実験する前に「静止した池」で実験しています。彼は「地球と一緒に磁力線も回転している」と予想していたのではないかと思います。でも静止した水では誘導電流は見いだせなかった。
この場合は「磁石が回転して導体は静止」なので村里さんの2のケースでしょうか。
そこで今度は予想変更して「水の方が動いて磁力線を横切る」という実験に移ったのでしょう。
ただ1832年1月という段階でそこまでの概念に到達できていたかは分かりません。テムズ川の実験をしていたときは,1831年8月からの様々な実験を通して,法則性をつかみ取っていく途上にあったのかもしれません。
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磁場を切るで良いかもしれません
教本では、電磁誘導と単極誘導の式が別々ですが、私もうみほしさんが言われるとおり電磁誘導の式で磁場を切ると解釈すれば、この式一つで良いような気がします。起電力が発生しないと言われる場合は、打消し合っているので、電量は流れないとすれば問題ないような気がします。
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巨大な磁石が浮いているようなもの
川やプールの実験では,川やプールの上空にN極を下向きにした巨大な磁石が浮いていて,その磁石の下で水という「金属板」が動いているとイメージするとわかりやすいかもしれません。
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磁場は空間に固定されている
私の解釈は、磁場が空間に固定されているとします。地球の自転は相当な速さで回転しています。川の流れは無視できます。それなのに川の流れの違いにより電流の向きが変化するのは磁場が空間に固定されていないことを証明したことになります。そうしますと、2と3の実験が解決できないことになります。それが現在まで議論の的になっているようです。
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磁場は固定されるか?
いつでもどこでも磁場が空間に固定されているかはちょっと疑問。なぜなら太陽面の磁場は自転で動いているから。黒点の磁場は太陽表面と同じように動いていきます。
永久磁石の磁性体原子の磁場と,太陽や地球のような導体の流動による電磁石の磁場は回転に対して同じかどうか?
むしろ単極誘導の問題は「回転対称な磁場の回転軸まわりの回転では磁場の変化が導体に対して全く無い=静止した磁場と同じ」というだけのことではないのか?磁場の静止などとというと「絶対空間」のイメージが思い起こされます。
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私も持論を投稿しています
私も、実験と持論をYouTubeに投稿していますが、賛同者はだれもいません。・・うみほしさんが言われたとおり,均等磁場であろうと、磁力線が銅線を切ることで電磁誘導と単極誘導は同じ式で表せると思っています。
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そこまで言えるかどうか
前のコメントの,
> ファラデーがテムズ川で実験する前に「静止した池」で実験しています。彼は「地球と一緒に磁力線も回転している」と予想していたのではないかと思います。でも静止した水では誘導電流は見いだせなかった。この場合は「磁石が回転して導体は静止」なので村里さんの2のケースでしょうか。
この部分訂正。
ファラデー自体の日記や著書から言えるのは,
ファラデーが最初に池で実験したときは「地球の自転で地磁気の何らかの効果があるかもしれない」と予想していたので,このときは「地球自身の磁場空間の中を地球が回転している」とイメージしていたことになります。
実験結果は「静止した水では電流は生じなかった」。
そこで「地球が自転で自らの磁場を横切る」という予想は捨てたのでしょう。
テムズ川の実験では「地表の磁力線を水の動きが横切れば電流が生じる」と予想し,実験結果はそうなりましたが,彼が予想していたような流れと磁力線と電流の位置関係にはならなかった。
(ここが私の実験とは違うので謎だと言っているわけです。)
そこで結論は出せなかった。
ということではないかと私は推測しました。
村里さんの言う「電磁誘導と単極誘導は違うからファラデーは分からなくなった」というところまで,ファラデーがこの問題を考えていたかはどうかな?
ファラデーが川の実験で予想していた「電流の向き」は今で言う「フレミングの右手の法則」通りだし,このことから普通に磁力線の向きと導体が動く向きの関係から,電流の向きを予想していたとしか考えられません。
村里さんの考えはおもしろいですが,1832年1月当時のファラデーがそのためにテムズ川の実験に失敗したとまでは言えないように思えます。
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相対性理論で乗り越えられました
最終的には単極誘導で露呈した「導体は何に対して動いているのか」という問題(矛盾)は,アインシュタインの相対性理論の冒頭の「「運動している物体の電気力学について」の主題になっていて,相対性理論によってこの矛盾は乗り越えられて解決されました。
「単極誘導」という現象は電磁誘導とは一見矛盾するように思えますが,アインシュタインによって,一段高いレベルで統合解決されています。
それについてはこのスレッドの範囲をはるかに超えるので,また別の機会に。
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やはり相対性理論ですか
やっぱり相対性理論ですか。
難しいけど、この切り口から相対性理論に入門すればアインシュタインと同じ発想ということになりますかね。まあ、これ以上は難解になりそうですね。
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村里さんのおかげです
ここまでこの話題が発展するとは予想外でした。村里さんのおかげです。
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ファラデーのすごさ
壮大な実験お疲れさまでした。お陰様で、ファラデーの凄さを改めて実感しました。
うみほしさんの次の実験を楽しみにしています。