スピンサリスコープ(6)

Tag: スピンサリスコープ 放射線 科学史

 さて,先日で終わったはずのα線を磁石で曲げて蛍光板で観測する実験ですが,新しい磁石のアイディアを思いついたので,必要な磁石を買って,再度挑戦してみました。
実験装置
 と違うのは,上の磁石を強力にしたことです。前回のようにリング状の磁石の上から見るのは同じです。
 磁石のカタログを見ると吸引力は「厚さ」が大きい方が強いとわかったので,蛍光板が見える大きさの穴(3cm)が空いていて,出来るだけ厚みのある磁石を注文しました。
 この磁石での一回目の実験は磁力を強くと思って,もっと磁石の間を狭くしていました。しかし,予想に反してほとんどα線は曲がりませんでした。
 そこで,これまでの結果から原因を考えてみると,あまり磁石を接近させすぎると,磁力線はごく短いものになってしまい,α線がうまく磁力線を横切ってくれないのではないかと考えました。
 そこで,上下の磁石の間隔をもう少し広げるようにスペーサー(家にあった適当な頑丈なもの)を変えてみました。と言うのは簡単ですが,100kg近い力で引き合っている磁石を再び引き離してして,もう一回セットし直すのは大変危険な作業で,また手を挟まれてしまい,取り外すのは大変でした。
 そして隙間を広げて,セットし直したのがこの写真です。
 そしてそのすきまに蛍光板と線源をセットします。上からカメラで覗きこんで,構図とピントを決めます。

 これがラジウムのα線です。以前より偏りが大きくなり効果があることがわかりました。
ラジウムのα線
2013/05/22 08:55:19
15秒×50枚比較明合成。SMC PENTAX 50mm F1.2リバースアダプターでK5IIsに接続,ISO51200。

 次の写真はラジウムの結果が正しいのか確認のために,ポロニウムの針状線源で行った結果です。
ポロニウムのアルファ線
 ラジウムと同じくα線が左に偏ってます。

 ということで,しばらく続けた蛍光板の実験はこれでおわりにします。
 最後に,もう一度強調しておきますがこの実験では強力磁石に挟まれて,私は何度も指を怪我しました。今回の上の方の磁石は吸引力80kgです。挟まれたら容易に引き離すことは出来ません。それを2つも使うのですから,間違ってくっついてしまうと引き離すのは大変力が必要です。磁石の取り扱いは充分な注意と慎重な操作が求められます。子どもには力不足で磁石を引き離すことが出来ず,挟まれたら大変危険です。
 力のある大人でも一人でやるのは,万一の場合,100kgに近い吸引力をどうするのかという問題が発生します。力負けしてどうしようも無くなる可能性があるので,安全に十分配慮してやって下さい。
 さらに磁石に弱い電子機器も近くに置かないことです。デジタル一眼レフカメラは磁石にくっつけるように接写しましたが,私の使っている一眼レフカメラでは誤作動は全くありませんでした。しかし,コンパクトデジタルカメラの方は誤作動を起こしました。
 それとこの写真は完全暗室で超高感度でないと撮れません。
 以上参考に書いておきます。

 実験材料の入手方法はスピンサリスコープ(5)に書いてありますので,そちらのページを参照してください。

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